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  • ガントリークレーン

    ガントリークレーン

    港湾の岸壁に設置され、接岸した輸送船と陸上との間でコンテナなどの積み下ろしを行う大型クレーン。

  • 台船

    台船

    ガントリークレーンは大型台船に積まれ大阪・堺泉北港を出港、丸4日かけて釜石港まで運ばれた。

難易度の高い大型構造物輸送案件に挑む

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東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県・釜石港は復興の途にあり、コンテナ取扱量は増加傾向であった。加速する復興需要に対応するため、県は支援を受けていた大阪府にガントリークレーンの譲渡を打診。堺泉北港で使用されていたクレーンが復興支援の一つとして無償譲渡されることとなった。岩手県が発注した工事を三井造船㈱が受注し、その輸送作業を担ったのが日鉄物流である。大型重量物の輸送を非常に得意としており、クレーンの輸送実績についても豊富だった。「釜石港を拠点としている北日本支店釜石地区と密接な連携を図ったこともプロジェクト完遂の重要な要素だった思います」と、今回の統括者を務めた山畑広豊。これほどの大型構造物の輸送に関わるのは、彼にとっては初めての経験だった。

工法・工程…課題は山積み

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クレーンは分解せず、そのままの状態で台船に載せて輸送する。課題の一つは工程立案である。クレーンは岸壁に平行に敷かれたレールの上を移動する構造になっている。船に積載するためには、岸壁に対して垂直に動かして移動させなければならない。そこで今回は、一時的に垂直方向のレールを敷設し、そこに乗せた走行台車でクレーンを移動させ、船に積み込む工法を採用。実行には、クレーンを積載する為の様々な準備作業が発生する。使用台船は1万トン級の大型で、そもそもの数が少ない。作業を行う場所には他にも利用者がおり、港湾管理者や協力会社との調整やスケジュール策定が最初の難関だった、と彼は苦笑いする。

*海上輸送用の箱船のこと

現場も管理し「無事故・無災害」を守る

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気象も頭を悩ます問題だった。輸送時期は夏、まさに台風シーズンだ。直撃を受けたら、安全管理上、クレーンの移動や積み込みはできない。経験豊富な上司や先輩に相談し、関係機関との綿密な打ち合わせを重ねながら、山畑は慎重にプロジェクトを進めていった。2017年7月、いよいよ移設に向けた作業がスタート。輸送中の破損を防ぐためクレーンに補強材の溶接や可動物の固定などを行った後、取付けたワイヤーをウィンチで引き込み、予め敷設したレールに乗せ、台船に積み込む準備を進めていく。炎天下、現場で作業を見守りながら、山畑は作業者の安全や健康状態にも目を配り続けた。地上高30m超の高所作業もあるため、わずかな油断も禁物。「無事故・無災害」はプロジェクトの重要な目標でもあるのだ。

技術部門と連携し、緻密な作業を進める

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移設作業の一つの山場が、台船への積み込みだ。スロープアップ移動させたクレーンを、走行台車を使って接岸し待機する台船に載せる。海面の揺れもある中、巨大クレーンを載せた台車と、100m級の台船との高さを合わせて積載していくのは至難の業だ。当然、潮汐のタイミングを考慮し、作業時間を設定している。次第に船が傾いていくので、バラストとして水を船に入れ、調整する。数分おきに作業を止め、船の高さや傾斜角度を測定し注水しながら、数㎝ずつクレーンを載せる。1日かけた作業が終わり、船上にそびえるクレーンを目にした時、山場を無事に超えたことにまずはほっとした。「この工程はRoll-on作業と呼ばれ、積み込みにあたっては実作業にあたる方だけでなく、輸送技術部門との連携が重要でした。プロジェクトの統括者として、各地にまたがる部署や会社間の橋渡しとしての機能を果たすのも営業マンの役目。改めて、物流は多くの人の知恵と協力で成り立っている事を実感しました。」

*船のバランスを取るために用いられる重し

地域の発展に貢献できたことを実感

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そしてクレーンは一路、釜石へ。8月17日、濃く立ち込めた霧の中からガントリークレーンが釜石港に姿を現した。クレーンを船から設置場所に移動し、復旧作業を終え試運転がなされた時、大きな感慨がこみ上げてきた、と山畑は言う。「実際にクレーンが動いて荷役する様子を見て、釜石港の発展に貢献できた、ここまでがんばって良かったと心底思いました」依頼される案件が大きなものであればある程、その度にまた一つ成長できたように感じる。この経験を糧に、どれほど大きく難しい物の輸送でも「日鉄物流が担当してくれるなら安心だ」とお客様から信頼される営業マンをこれからも目指していく。今、山畑の眼差しは、次なるプロジェクトに注がれている。

IN THE END

山畑 広豊

プロジェクトに携わって

こういった大型重量物の輸送は、専門の設備、技術に加え、確かな知見が無いと達成できないものです。今回、このプロジェクトの中で様々な課題に向き合い、自分の中でノウハウやソリューション力が積み上がりつつあることを感じています。今後も同様の案件に積極的に携わって経験を積み重ね、日鉄物流の先輩方が培ってきた技能を次代に引き継いでいきたいです。

山畑 広豊
2009年入社 国内営業本部 プラント物流部

記載された写真および原稿は2017年12月時点のものです。