日本で唯一、製鉄所の構外まで走る専用鉄道「くろがね線」
福岡県、北九州市に位置する九州製鉄所 八幡地区。
日鉄物流はそこで原料荷役から製品受入・保管・出荷までに関わる『鉄づくりにおける一連の業務』を担っております。
特徴的なのは日本で唯一、製鉄所の構外まで走る専用鉄道「くろがね線」で鉄を運んでいること。昭和5年の運行開始から90年以上、今もなお鉄を運び続けるこの路線。時が経っても色褪せることなく役割を果たし続けるくろがね線についてご紹介します。

くろがね線は、九州製鉄所の八幡・戸畑間をつなぐ専用鉄道。運行時間は、片道約30分。上り5,600m・下り6,000mの距離を、24時間休むことなく走行しています。

昭和5年から走り続ける長い歴史を持っています。当初は「炭滓線」という名前で走行していましたが、輸送物は次第に炭滓(石炭の燃え殻など)から鉄へと移行。昭和47年の社員公募によって現在の「くろがね線」と名付けられました
九州製鉄所八幡地区の3つの拠点のうち、くろがね線は戸畑地区から八幡地区への半製品の輸送を行っています。
八幡に運ばれた半製品は、そこから更に船に乗って小倉地区へ。3地点を「の」の字のようにつなぐこの輸送ラインの要を担うのが、くろがね線なのです。
主に輸送するのは、製品になる前の半製品(コイル)。
濡れない様に運ぶ必要があるため、カバーをかけて工夫して輸送しています。

機関車が先頭だけではなく後方にも
くろがね線を走る機関車は2種類あります。
①先頭の電気式ディーゼル機関車②貨車の最後尾に連結する緩急車(ディーゼル機関車)
現在八幡地区では、各機関車2台ずつ計4台を保有しています。
それでは、それぞれの機関車を見ていきましょう!
①電気式ディーゼル機関車
「くろがね線」の最新式の車体は、電気式ディーゼル機関車。
ディーゼルエンジンで発電機を回し、その電力でモーターを回して推進するハイブリッド方式の車輌です!
1度で約1,550tもの半製品を輸送することができます。車輌部分はカバーで完全に覆われており、走行音を静かにする工夫も。
走行速度の調整補助機能や、積み荷の様子を確認できるカメラなど、安全性を高める設備が充実しています

運転士が手動で速度を調整する旧式から進化し、速度の調節補助機能が備え付けられています。
自動で時速10㎞前後を保つことができ、安全性も向上しました。

車輌の前後にはカメラが付いています。
カメラを確認することで、運転席でいつでも、接合部や積まれている荷物の様子などを確認することができます。

②緩急車(ディーゼル機関車)
製品の後ろに連結し、上り時のプッシュや下り時のブレーキのサポートを果たします。
緩急車にも1名運転手が乗車しており、前方の電気式ディーゼル機関車の運転手と連絡を取り合いながら運転します。

運転手 吉本さんのコメント
鉄道輸送課 八幡鉄道係
石丸雄貴さん

くろがね線の運転が停止してしまえば、製鉄所内の供給・生産ラインも全て停止してしまいます。
また、住宅地のすぐ横を走る路線ですので、製鉄所内での運行時以上に安全には気を使っています。非常に重要かつ責任ある役割を担っている意識を持って、日々の運転業務に励んでいます。
鉄道輸送課 八幡鉄道係運転席からの様子。
線路の真横には住宅街があります。住宅のすぐ横を走るときの時速は10km程度に落とし、走行音を抑えるようにしています。
